ティップス


植物のガス抜き

○○○○○○○○イメージ

植物は内部に空気を含んでいるためそのまま水凍結乾燥するとよい試料ができないことがあります。ふたに直径4mmの穴をあけたバイアル瓶に試料を入れ、シリンジを接続して減圧します。このとき、なるべく空気が入らないようにします。ピストンを数回引いて減圧すると内部に水が入り試料の色が少し変わります。撥水性の強い試料の場合は、界面活性剤の希釈溶液を使用するとよいでしょう。界面活性剤を使用した場合は、処理後よく水洗してから水凍結します。


洗浄

水凍結乾燥は凍結した水分を昇華させるので、試料と共に凍結する水に、培養液や塩分、ごみなど不揮発性成分が存在すると水分の昇華過程で濃縮されて試料表面に残留します。凍結乾燥に使用する水は精製水を使用します。野外で採取した生物は一緒にごみや泥、砂などが入ってしまう場合が少なくありません。肉眼や実体顕微鏡下で試料が確認できる場合は、スポイト・毛細管マイクロピペットなどで吸引採取する方法が適しています。吸引した試料を精製水中に移し、さらに吸引して水凍結乾燥試料台に移します。試料水が汚濁している場合、また、培養液や海水中の試料は吸引して新たな精製水に移す作業を数回繰り返します。小さすぎる試料や運動能力が高くて捕捉しにくい試料にはこの方法は使えないので、目的の試料サイズが既知の場合はフィルタやふるいを使って分けます。砂は、撹拌後静置して沈降速度の差によって分離除去します。遠心機が使える場合は、500rpmの低速回転で砂を沈殿させた上澄みを使用します。


凍結乾燥試料台

標準の凍結乾燥試料台は、直径10mmの円柱形SEM試料載台の上面に直径8mm深さ1mmの窪みを設け、その底にカーボン両面テープを貼ったものです。真空乾燥によって氷が昇華すると試料はテープ上に固定されるので、乾燥完了後、凍結乾燥試料台をそのまま導電コーティングしてSEM観察します。この場合、試料の向きは変えられません。試料の特定部位を観察する必要のある場合、両面テープの上にセロハンなどの薄いプラスチックフィルムを張り付けると試料は固定されずに乾燥できます。乾燥完了後に試料を静電気で吸い付けて、SEM観察用試料載台に移し替えて観察します。
直径12mmの丸カバーグラスの上面に、外径12mm、内径8mmの樹脂粘着テープを貼り付けて、試料と水を保持できるようにしても凍結乾燥試料台として使用できます。
水凍結乾燥法は、試料を水に囲まれた状態で凍結すればよいので、メンブレンフィルタ用のろ過器で試料を洗浄、フィルタ濃縮し、フィルタ上の水がなくなる前にフィルタをろ過装置から取り外して冷却装置で凍結後真空乾燥し、フィルタ上の試料を直接SEM観察することもできます。フィルタは直径25 mmのポリカーボネートメンブレンフィルタを使用します。冷却した金属にフィルタの全面を同時に接触して凍結する必要があるので、枠をフィルタに張り付ける必要があります。枠は厚さ0.2-0.35 mm程度の樹脂粘着テープ、例えば超高分子量ポリエチレンフィルムテープを使用します。直径25 mmの穴あけ用サークルポンチで25 mmの樹脂粘着テープ円盤を作製し、中心に10mmのポンチで穴をあけます。サークルカッターを使用しても作製できます。凍結乾燥したフィルタは下図のように処理してSEM観察します。